僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
俺はなんて親不孝な人間なんだろう?
今からこの人たちをどん底に突き落とすんだって思うと気が引けるけど…。
これ以上”女装”を続けるのは限界だった。元居た幼馴染たちが離れた今、男になっても不審がる人はきっといない。
だから、思い切って打ち明ける。
小さな頃から感じていた違和感を。
「お父さん、お母さん・・・。聞いて欲しいことがあります」
「なに?」「どうしたんだ?改まって‥」
心配してくれる表情に心が痛む。これを言ったら軽蔑されるかもとかの不安は消えないけど、思い切って言葉にしていた。
「わたし・・・僕は、男に、なりたいです」
「―――――え?」
「おとこ・・になりたい?」
両親は明らかに動揺していた。
「女として生きていくのは、もう限界なんです」
「――――だからって・・・、どうやって男になるっていうの?あなたの身体は”女”なのよ?」
「性転換したいとか、そういう話なのか?祐子」
違う、そんな事ではなくて―――まだ、そこまで考えていない。
「まだ、そこまでは考えてませんが…」
「じゃあどこまで考えているの?―――女なのに男として生きたいってどういう事?好きな子が女の子とか、そういう話なの?」
「それは、よく分からないよ」
「良く分からないのに、どうして男になりたいの?―――気のせいなんじゃないの?」
「ちがう・・・気のせいなんかじゃない」
「じゃあ、どういうことなの?―――母さん、よく分からないわ…。分かるように説明してよ‥祐子」
「・・・・・・・」
泣き出す母さんに、戸惑って言葉が出なくなった父さん。
俺が両親にした初めてのカミングアウトは、お互いがギクシャクするだけで、何の答えは出やしなかった。
何となく、もう家には帰ってこれないなと落胆する。
もう、普通の親子に戻れる気がしなかった。