僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「詩安、あした陽介が野球来いって」
「あ、何時?」
「ん~~~っと、朝の7時、小学校のグラウンド集合」
「りょーかーい」
コイツは同居人の飯塚紗子。
「また貸してね、湊斗くんの野球練習着」
「うん、だしとくね~」
紗子は俺の三個上。
三個しか変わらないのに、叔母、甥っ子って位置にある。
紗子は、俺の母ちゃんと腹違いの姉妹なんだ。
そうして結婚直前に婚約者が行方不明になってしまった哀れなやつだ。
一緒に住んでいる家は、湊斗君が住んでいた平屋を結婚に向けて増築して二階建てにした。
その完成を待つことなく、彼は失踪してしまったんだ。
「うぇーい!しあん~~」
陽介が俺に挨拶代わりのボディアタックをしてくる。
「いって、この!」
二人で遊んでたら小学生の子たちが集まりだして手際よく準備を始めていた。
「ちわーっす!」
「おねがいしやーす!」
元気に俺に挨拶していく子供たち。
「悪いな、出勤前に」
「いいよ、野球好きだし」
陽介は地元の漁協組合の職員として働く傍ら、紗子や陽介が通っていた小学校の野球少年団のコーチをしていた。
俺は、ここに帰省するたびこいつらと野球をやって仲良くなった。
その延長で、ここの子供たちに教える手伝いをしているんだ。
「今日はコンブ漁何時まで?」
「10時。だから、9時前には帰さないと」
「わかった」
ここらの子供たちの親たちは、8割がた漁師の家の子だ。
その半数以上は昆布漁師の子。
今日みたいな休みの日は父親が採った昆布を干す作業を手伝う。
操業時間は10時までなので、それに間に合うように帰さなければいけない。
おれも、仕事が休みの日はジジの昆布を手伝いに行っている。
「はいはい!はしれー!もっと早く身体切り替えろ!はい、タッチしたらすぐダッシュ!」
「そんなんじゃ刺される(タッチアウトのこと)ぞ~」
練習は厳しくとも、子供たちは競い合ったりして楽しそうだった。