僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「あざしたー!」
「したー!」
元気に帰って行く子供たちを見送り、俺は陽介と車に向かった。
「紗子どう?順調?」
「まあ、うん」
紗子は今妊娠中だ。
婚約者がいないのに、何でって思うよな?
「―――しっかしよ、お前の子じゃなかったら誰の子なのさ」
「・・・知らねーよ」
本当は知ってる。
紗子は一ヶ月くらい海外へ行ってたんだ。
誰に会いに行ってたなんて、すぐにわかった。
「シングルマザーかぁ、意外。あいつ小さいころからモテたのに、そういう結末とかさ」
「そんな事言うなよ」
「お前らがいとこだったらな、よかったのに」
そんな事、小さいころから何度も思ったよ。
いとこだったらよかったのにって、何度も何度も思った。
小さいころから湊斗君に付きまとって、湊斗君はその想いに応えないって思ってたのに、惜しくも俺が二人をくっつけるきっかけを作っちまった。
でも、こうやって失踪してよチャンスだと思うじゃん?
なのに、やっぱな…。
せめて一緒に住み続けて、産まれてくる子供と家族のように生きようと思ったけど、紗子は勿論そんなことを許してはくれなかった。
「また夜にな?秋祭りの練習来るだろ?―――ってかよ、お前健司君に狙われてっから、覚悟しとけよ」
ゲゲ~…夜の余興でやるコント漫才…まだ諦めてないんだ…。
でもまあ・・・ここの土地で大人になりたいって思ってた俺は、なんだかんだでここの生活を楽しんでいた。
遂には長年憧れていた村祭りにも参加出来たんだ。
夏休みに遊びに来ていた小学生時代、それに参加するから帰らないってよくダダをこねて両親を困らせたものだったけど、やっとその願いが叶ったんだ。
もう少しその余韻に浸っていたかったのに、現実は急に俺に迫ってくる。
夢のような秋祭りが終わって、二日後のことだった。