僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
三食きっかり食べないとダメよ?
食事バランスには気をつけてね。
栄養が偏らないように、サプリメントをまた送るから。
いつもの小言を聞きながら、小さく飾られたランチプレートを空にしていく。
実家にいる時は当たり前だったことも、ひとり暮らしを始めて有難いことだったんだって思い知る。
自分のことを親身になって心配してくれる存在が居るってことが、どれだけ寂しさを埋めてくれただろう?
自由な生活と引き換えに俺に張り付いてしまったのは、孤独だった。
最後、バイバイする前にお母さんは意をけしたように聞いてきた。
「祐子・・・。ごめん、聞きづらかったんだけど、心配で・・・」
「どうしたの?」
「・・・ホルモン注射とか・・しているの?」
深刻な顔して聞いてくる母さんは、何かの本を読んでその知識を得たんと悟った。
「大丈夫だよ、母さん。ホル注は打っていない。この髭だって、元々女子にしては濃いめのが生えてたんだ。それを剃るのをやめて整えただけだから」
そう言ったら、母さんはホッとしたように笑顔を見せてくれた。
俺がなりたいものへの代償は、こんなところにも発生してくる。
俺と会わなかった数週間、きっと彼女は不安な夜を過ごしてきたんだろうと思うと、胸がチクリと痛む思いがした。