僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
ステージには、音響専門の社員が見守っているから、俺は目につくものから手を付けて行った。
中盤になると、カウンターに人が集まるから、そこに入って手伝ったり、出入り口の灰皿を片したり。
たばこの吸い殻、紙コップ、チケットの半券。
ゴミが目立ってきて、塵取りとほうきをもって階段を上がったら、フード室には何人かの人達がたむろっていた。
目当てのバンドまで時間を潰すように、ここで雑談しているんだろう。
楽しそうな雰囲気に耳を傾ければ、おれもって同調したくなるような内容もあったりして、勝手に親近感を持つ。
そんなことしても、虚しいだけって分かってるけどさ、そんなどうでもよさそうなことでも楽しいんだ。
俺がここで働く理由は、一人にならなくて済むからだ。
熱狂してる会場を見渡せば、自分も熱いものが込み上げてくる。
演じる側と見ている側のとてつもないエネルーギーが混ざり合って、大きな一体感が生まれるあの瞬間が好きなんだ。
「はい、島くん見過ぎでーす。仕事しましょーね」
「はーい」サボってんのがバレた。
いったん外にでて、吸い殻やごみを集めていた。
そうしたら、女の子が一人。
スタッフでもないのにごみを片してくれていた。
「すみません、ありがとうございます」
そう言って声をかけて、拾ってくれたごみをもらうために手を差し出した。
「あ、・・・!!」
なぜか女の子は、ハッとしたまま固まっていた。
「・・・・どうか、しましたか?」
「あ、、、いいえ」
慌てたように手をブンブンと振って、ごみをまき散らす。
「ご、ごめんなさい!私ったら…何してんだろ、もう、いやだ」
凄くテンパってるな…なんでだろう?
「ありがとうございます。ああ、いいですよ、元々は僕らの仕事なんで」
「いいえ、まき散らかしたのは私ですから」
結局最後まで綺麗に拾ってくれて、そそくさと友達のところに帰って行った。
なんだったんだ?
疑問に思いつつも、インカムに急用の仕事が入って現場に戻った。