僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「お疲れーっす」
「お疲れ様です」
「あざっしたー!」
「お疲れっす」
トリのライブも終わって、客もはけたホールの掃除をしてたら、帰り支度が終わった出演者たちが、スタッフに挨拶しながら帰ってく。
みんな、見た目の悪さとは裏腹に腰が低い。
バンドって意外と礼儀正しくて、イベントスタッフやオーナーにはきちんと感謝を伝えてくれる。
私生活まで悪い人なんて、なかなか、いない。
でも、ごくたまにそう言う人もいるけどね。
前のイベントのトリ(最後の出演者)がそうだった。
人に媚びらない、群れない=不良=かっこいいみたいに思ってるに違いない。
出てやったんだぞオーラをまき散らしてた彼らのファンはいっぱいいて、10代の女の子に人気だ。
見た目のゴツさとは反対に、ラブソングや青春ソングばかりで、男の俺には良さがわからない。
顔がいいからか?
今日のトリも同じ雰囲気がある。
ふて顔を振りまきながら出ていく彼らは、確かに実力も人気もあった。
男ばかりで会場が埋まるのは、曲作りのセンスがいいからだろう。
でも、媚びない彼は誰一人とも挨拶をせずに、裏手から会場を去っていった。
「ああいう奴ってよ、いいところまでいくけど、結局人間関係でしくじって終わりな」
誰かがそんなことを囁いていた。
「アー・・疲れた」
家に帰って、誰もいない空間に戻る。
少し寂しくなってスマホを見れば、よく遊ぶ先輩からラインがきてた。
『明日、いつものクラブで集合』
『わかりました』
母さんに止められているけど、先輩の呼び出しは断れない。
俺はこの人に幾分か救われているんだ。
悩み事を相談できる先輩でもあるし、俺を”普通の男”にしてくれるんだ。
明日の夜は何も予定がないから助かった。
これでまた、孤独になる夜が一つ埋まる。