僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

視線をスクリーンに映したけど、悲惨的なバイオリンの音と戦闘シーンが繰り広げられるだけで、話の内容はわからなかった。


「まったぁ、悲しそうな顔してんな」


いつの間にか起きていた先輩は、俺の顔を横目で見てから腕時計に目を落としていた。

「もう、5時だって。何時起き?」
「11時ですね」
「そっか、じゃあ帰って少し寝れるかもな。帰るか」
「はい」


朝霧がさめない街並みを歩き、駅へと向かう。

途中まで一緒にのって、路線が変わる駅でお互いに踏み出そうとしたときに、声をかけた。


「先輩、今日はありがとうございました」


おかげて、孤独な夜が一つ消えた。


「集合かけたのこっちだし」

男前に笑って違うホームに歩いていく。

そんな先輩の背中がカッコいいと思った。


それは、男としてのあこがれなのか


それとも、恋なのか・・・・


やはり、どっちかわからない。


「めんどくせ、俺」

今が夜じゃなくてよかったと思う。

深く考えすぎて迷宮入りすることがない。

これから、明るくなる朝でよかった。



周りは、今日という一日が始まる人たちで段々とあふれてくる。
自分はそれから逆光のような人物になった気持ちで、反対側の道へと歩みだしていた。



< 29 / 231 >

この作品をシェア

pagetop