僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「ハルはも4年になるけど、就職とかどうなのかな?」

「うーん、なんかね、決まったみたいよ?IT関連でどうのこうの言ってたけど、母さん疎くてね、あまり覚えてない」

「そう、ハルは昔からWebデザイナーとか、エンジニアになりたいって言ってたから。希望通り、見つかったんだね」

「うん、これからちょくちょく研修とか講習会あるみたいよ?」
「そうなんだ」

ハルはいいなと思えた。
好きなことを仕事にできて。

小さな頃はお互いにバカになって遊んでいたけど、どこでこんなに差が出来ちゃったんだろうな。


「あ、噂をすれば」

母さんが嬉しそうに窓を見たから、つられてみればハルが門扉を開けて入ってくるところだった。

その堂々たる勝手知ったるしぐさに、お前はここの住人かとツッコみたくなる。

「こんにちはー、おばさーん、・・・お客さん来てたの?」

「うーん、珍しい人がいるのぉー、入っておいでー」


ここで帰すのも変だから何も言えないけどさ、どういう顔していいかわかんないな・・・

お邪魔しまーすといいながら入ってきたハルは、私の顔を見るなり疑視しながら祐子とつぶやいた。

「・・・・・・・」

沈黙が続く。

背が少し伸びたな…。
顔つきが細くなったし、可愛いイケメン君だったけどさ、大人の男の顔つきになってる。

二年って凄い、こんなに変わるんだ。


「久しぶり、ハル」
「久しぶり・・・じゃあねーし・・・。何してたんだよ、2年も帰って来ねーでよ!」
「ん、ごめん・・・・」
「・・・あほか」


怒ったように吐き捨てて、そのまま静かに出て行った。



「あらあら・・・帰っちゃったね。晴君ね、心配してたのよ?なんで通える距離なのに家を出ていくんだ?って。その後も顔は出さないし?去年なんて、変な男に掴まって監禁されてるかも!とか騒いだことあったんだから」

そうだったんだ。


「帰りづらかったの?いつでも帰ってきていいよって言ってたじゃないの」
「うん、ちょっとね」

勇気がなかった。

ハルに知られるものなんか嫌だったし、母さんと父さんが一生懸命ここで築いてきたものを壊してしまいそうで、気が引けたんだ。

一人っ子ってのもあったかもだけど、両親は本当に愛情深く育ててくれた。

だから、俺がこうなってしまったのは両親の育て方が・・・とか?

近所の人らや親戚たちに偏見の目で見られそうで、嫌だったんだ。

「母さん、今日泊ってっていい?」
「どうして聞くのぉ?あなたの家でしょ?」

「うん、そうだね。———ちょっと忘れてた」
「変な子ねぇ」

母さんはそうやって笑いながらも、目には少し涙が溜まっていた。

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