僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
俺の言葉なんかに反応しないハルは、軽く肩を回してた。
声掛けもなしに軽く手を挙げてから、オーバーに振りかぶってボールを投げてくる。
そのお構いなしの強い送球に笑みがこぼれる。
気を使って優しく投げられたら嫌だからいいけど、とても『女』に投げる速さじゃない。
勢いがあるまま軽く弧を描いて俺のグローブにスパン!と収まった。
この音と、グローブに吸収された飛ぶ力。
まだ幼かった幼馴染たちの姿を思い出した。
「フハっ!さっすが。女にしとくのもったいねー」
「そのまま手加減しないでね、ハル」
「はっ、誰がするかよ」
最初は、肩を慣らすために大き目なアクションでしていたけど、段々とお互いにヒートアップしてって動きが小さくなり、送球が早くなる。
「落としたら負けね」
「勝手に決めんなっ」
取った後にいかに早く相手に返すか。
ただそれだけにお互い夢中になった。
動きに無駄が無くなって、ステップを踏むかのように体が弾む。
捕る直前には投げるしぐさに入るくらい、気持ちがノッてくると、息が弾んで苦しくなってきた。
それでも、俺とハルは昔みたいに笑いながら投げ合った。
苦しい時こそ、わけわかんない雄たけびあげたりさ。
この感じ、懐かしいな。
こうやって近所の奴らと遊んでた頃は、恋するとか、誰かを好きになるとかよくわかんなくて、興味と憧れしかない子供だった。
きっと想い合うって幸せだなんだろうって思っていた。
でも実際、ケイに恋をして現実を見た。
好きなのに苦しくなったり、妬んだり、絶望するなんて、あの頃は思ってもいなかったよ。