僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「ユウは、綺麗な目をしてるよな。———純粋で曇りっ気のない…。そうやって愛した人たちを、見つめてきたの?」
出会い系のサイトで何人かと関係をもったことはあるけど…。
真剣に愛した人…は、一人しかいない。
「ユウは一途に恋人を想っていそうだよね。…いいなぁ、そういうの。———俺もそんな恋がしてみたいな」
顔が歪むのが、自分でもわかる。
そう思うなら、ほのを大事にして下さいよ。
きっと、あの子なら、人を真っ直ぐに愛せる。
紫音先輩、ほのの事を・・・・
「わりい、酒入ってるし、許して」
そういって静かに顎を掴まれて、顔を近づけた先輩は
鼻をすり合わせるようにしてから、俺の反応を確認して・・・
顔を真っ赤にしたおれの反応に満足げに微笑んでから、唇を重ねてきた。
重ねるだけじゃ終わらなくて、幾度と離しては、俺に視線を合わせながら触れるキスを繰り返す。
そのうち、抱きかかえながら、頭を抱えて深くつながるように舌を絡ませながらキスをしてきた。
どのくらいそうしてきただろう。
お互いに舌を交わす水音が、やけに頭に響いてる。
驚いて、動けない。
いや、———ちょっと違う。
動けないんじゃなくて、動きたくない。
どういう訳か、俺はこの人とキスすることが好きみたいだった。
顔が離れて、耳がざわざわと壁越しの会話を再び拾い出した。
それで初めて、キスの間耳からの情報が遮断されていたことに気づく。
「このまま部屋に連れていきてー」
当たり前のようにつぶやく先輩。
脳の処理が追い付かない。
「どうして?」
「———は?」
「だから、どうして、キス、したんですか?おれに」
「・・・さぁ?どうしてだろうな?」
なんで・・・先輩が?
俺に・・・・キス??
そして、それで、『部屋に連れていきてー』って…
なにが・・・・どうなってる?
「一ヵ月、そうやって悶々と考えてろ。頭の中、俺のことでいっぱいにしとけよ」
不敵に笑って見せた先輩は、一万円をテーブルに置いて席を立った。
先輩のキス、穂香の涙。
何かが始まってるんだ。
俺の知らなかったところで、二人は動き出している。
そう頭で思いつつも、俺はしばらくそこで呆然としたまま、席から立ちあがることが出来なかった。