僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「ずりい、俺も頭撫でて」
その不貞腐れ具合がなんとなく可愛くて、笑いが漏れた。
「笑ってないで、早く」
頭を突き出してくるから、ひと撫でしたら満足そうにニヤついて、布団に横になる。
「先輩もここで寝るんっすか?」
「そうだよ、もしお前らがここで何かあったらやだもん」
俺を真ん中にして、先輩も横になる。
「ユウ、手握って」
照れ臭いけど、素直に出したら喜んでる。
「寝るまででいいから、彼女も握ってあげて。喜ぶと思うよ」
同じように握って顔を見れば、起きた様子はないけど、かすかに微笑んでいる。
「恋敵の肩を持つことはしたくないけど」
顔を紫音先輩に戻した。
もうすっかり夜はあけて、薄暗い空間の中だから、顔色がはっきりと見える。
「出し抜けしてキスしたからな、罪滅ぼしでいうけどさ、彼女」
「はい」
「俺、結構きつく言ったんだよね。あんたと付き合っても、将来結婚できないし、未来がないよって。———俺とだったら、この先どうにか結婚もできるし、子作りも出来るし、親にだってなれるって言ったらさ、自分だって手段を選べば同じこと出来るし、幸せにできますって言い返されたんだ」
「———・・・・そうですか」
それは、単純に嬉しい。おれのことを考えてくれてたんだって。
「ホワホワしてるだけの能天気お姉さんだと思ってたからびっくりしたよ。なかなか根性あるなって。それで、こんな考えに行き着いたんだ。びっくりしたよな」
「———はい、正直に言えばかなり」
「でも、何度も言うけどユウは何も気にしなくてもいいから。好きなやつが他に出来たらそいつのところに行けばいいし。ただ俺と彼女は笑ってるお前のそばに居たいだけだから、軽く考えてな」
「———努力します」
「真面目だな」
静かに笑う先輩の顔が見えなくなった。
俺も眠さの限界。難しいことはもう考えたくない。
俺たちは二つの布団の中に身を寄せて、手を握りながら眠りについた。