僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
初めはギクシャクすると思ったけど、この三人で過ごす時間は、俺にとっても彼らにとってもいいものになりつつあると思う。
居心地がいいと、ずっとこのままで、なんて思ってしまいがちだけど、二人は答えを待ってるんだったと現実に戻る。
なんで、俺なんかがって思う。
二人とも、何の冗談なのかってくらい不思議なんだよね。
紫音先輩は何もしなくても女の子が騒ぐくらいの雰囲気と容姿を持っていて、加えて秀才だし運動神経万能で、高校生から目覚めたんだって空手や剣道を習ったらしく武道にも通じてる。
文字通り、文武両道。
それはそれは、彼に寄る子は行く数多。
でも、その中で1年持った子いないとか自慢してたな。
ほのは、ふんわりと優しく笑うおっとりとした子。
でも、意外に芯が強くて、自分で決めたことはやり遂げるし、努力を怠らない子なんだって最近知った。
料理上手で、下品なところがなくて、育ちの良さもちゃんと見える。
それが、嫌味なく彼女の個性として見えてくるんだ。
そんな、人として、かなりハイレベルな二人が、なんで俺?って、不憫に思うよ。
”祐ちゃんって、男も女にも、同じくらい好かれるよね”
過去にケイに言われたセリフ。
ああもう、なんでケイの言葉なんて思い出すんだよ。
それで、なんでこんな悲しい気持ちになるのさ。
「マイナス思考禁止———」
「祐くん、はい、食べようね。お茶もあるからね」
「せっかくのデートなんだからさ、もっと楽しそうにしてくれよ」
「紫音さん、強要しちゃだめだよ。そのままでいいって決めたじゃない」
「あ――、そうだったな。ユウ、せっかく晴れたんだから、初夏を楽しもうぜ」
「はい、すいません、そうですよね」
「いいんだよ、食べよう」
「うん」
笑顔でも、その中には心配そうに伺っている様子が見て取れる。
気持ちを切り替えて、目の前のお弁当を堪能した。
これを作るために何時起きしたんだろう?
「すっごく美味しいよ、ありがとね、ほの」
頬を染めるほのに対して、つまらなそうに口を尖らせる先輩。
なんか、くすぐったくて、こんな贅沢していいのかなって思うけど、今はこの三人でいれるありがたさに、甘えることにした。
ほのが作ってくれた弁当を綺麗に平らげて、紫音先輩が持ってきてくれた敷物に三人とも寝転んでいた。
休日の公園で、大きめな敷物に三人で横になって、青い空と薄い雲を見上げていた時だった。
「俺たちって、最強じゃね?」
誰にいう訳でもなく、紫音先輩がつぶやく。
「こんなのさ、普通のカップルだったら恥ずかしくて出来ないけど、この三人なら怖いものないな」
「ハハっ、なんすかそれ」
「ほんと、紫音さんでもそんなこと思うんですね」
「だってそうだろ?おれ、今まで女と、こんな事したことないけど、案外いいもんだなって思えて」
「花見の後に公園で弁当食いたいって言ったの先輩じゃないっすか。てっきり慣れっこだと思いました」
「まさか、そんな重い女と付き合う訳ねぇじゃん。————あ、ごめん、ほのちゃん」
「べっつに、いいですけどね」
「ほの、俺はそんなこと思わないよ」
「うん…。祐くん…そう言ってくれるから、好き」
「俺も好きだからな。そこ忘れんな」
「……はいはい」
二人で先輩が言っていたことを笑ったけど、本当は俺も同じようなことを考えていた。