エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
見られていたことに気づいていなかった。地元に戻ってきた時点で顔見知りと会う可能性はあったから、ビクビクしながら通院はしていた。
その分、細心の注意を払っていた。でも、私ひとりのことなんて誰も気にしていないとも思っていた。街を歩く人の中で誰からも見向きもされないちっぽけ存在。そう思うと悲しかったけど、注目されるのも嫌で、背中を丸めてひたすら俯いて家に帰っていた。
「柚の顔すごくつらそうで、なんとか踏ん張って歩いてる感じだった。私、その時、あの時のこと思い出して、あの行動で柚のすごく大切なことを狂わしちゃったんじゃないかって……ずっと見て見ぬふりしてきたことが頭に過ったの。私は結婚する、でも柚瑠は……。だから、私の手でもう一度ふたりを引き合わせようとした。そしたら旦那が工藤の連絡先知っていたの。その時は飛び跳ねそうなくらい嬉しかった。もう一度ふたりをちゃんと正しい道に戻せるって。急遽、工藤も結婚式に呼んだの」
胸の中の澱を吐き出した萌は、そこで口を閉じた。下を向いたまま、苦しそうに嗚咽混じりに呼吸して肩が揺れる。華奢な身体が崩れ落ちてしまいそう。
私がそっと肩に触れると、ビクッと彼女が震えて顔を上げる。白い頬が涙で濡れていて、反動でまた雫がそこに溢れ出ていく。
「ごめん!ごめんね、柚……本当はもっと早くあなたたちは一緒になれたかもしれない!つらい経験もしなくて済んだかもしれないし、全部私のせいっ……本当に、ごめんなさい」
萌が泣いて謝り続ける。
私は萌が泣き止むまで背中を撫で続けた。
その分、細心の注意を払っていた。でも、私ひとりのことなんて誰も気にしていないとも思っていた。街を歩く人の中で誰からも見向きもされないちっぽけ存在。そう思うと悲しかったけど、注目されるのも嫌で、背中を丸めてひたすら俯いて家に帰っていた。
「柚の顔すごくつらそうで、なんとか踏ん張って歩いてる感じだった。私、その時、あの時のこと思い出して、あの行動で柚のすごく大切なことを狂わしちゃったんじゃないかって……ずっと見て見ぬふりしてきたことが頭に過ったの。私は結婚する、でも柚瑠は……。だから、私の手でもう一度ふたりを引き合わせようとした。そしたら旦那が工藤の連絡先知っていたの。その時は飛び跳ねそうなくらい嬉しかった。もう一度ふたりをちゃんと正しい道に戻せるって。急遽、工藤も結婚式に呼んだの」
胸の中の澱を吐き出した萌は、そこで口を閉じた。下を向いたまま、苦しそうに嗚咽混じりに呼吸して肩が揺れる。華奢な身体が崩れ落ちてしまいそう。
私がそっと肩に触れると、ビクッと彼女が震えて顔を上げる。白い頬が涙で濡れていて、反動でまた雫がそこに溢れ出ていく。
「ごめん!ごめんね、柚……本当はもっと早くあなたたちは一緒になれたかもしれない!つらい経験もしなくて済んだかもしれないし、全部私のせいっ……本当に、ごめんなさい」
萌が泣いて謝り続ける。
私は萌が泣き止むまで背中を撫で続けた。