エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
萌の言うことが本当なら、朔もあの頃私のことを想ってくれていた。里見さんの話だけでは心許なかったことが、より真実味を帯びてくる。それだけでも今は心強い。
ボロボロだった私と結婚しようと言ってくれた朔を信じよう。
そのために、今日は朔の好きなもの作って待ってよう。
といっても、カレーライスだ。私が失敗しない数少ない料理のひとつ。
「あ、買い物して帰ろうと思ってたんだった」
料理のことで、明日の朝食のパンがもうないことを思い出す。
いつものベーカリーに寄ろうとマンションの手前で方向転換した。
その時だ。公園から女の子が勢いよく走ってくる。歳の頃から幼稚園か小学校低学年くらい。
「ちょっと待ってよー」
その後を男の子が追いかけていく。女の子よりちょっと身体が小さめで、ボールを抱えてちょこちょこと走る。
朔もあんな感じだったな。
私よりも小柄で女の子みたいだった。大人しい子供だったけど、私の後を追いかけてくるのが可愛くて。それをするのが私だけだったから、幼いながらに優越感というか、心がときめいたものだ。
なんだかんだで、私、昔から朔のこと好きだったんだな。
歩きながら思い出を回想し始めた時、男の子の手からボールが落ちた。足に当たって転がるそれを慌てて追いかける。
ボールが道路側にはみ出た先にバイクが見えた。男の子は気づかずボールに向かって手を伸ばす。
危ない!
声が出る前に身体が動いていた。小さな身体を前へと突き飛ばす。
その瞬間衝撃があって、視界が暗くなる。次に目を開いたら目の前が空一色だった。身体を少しでも動かそうとしたら、身体に激痛が走る。道路の上に転がって天を仰ぐしかない。
「もうすぐ救急車くるからね!しっかり!」
近くで誰かが私に声をかけてくれる。答えようにも頭もガンガンと痛くて声が出ない。これは頭を打ったかもしれない。目の前で現在に至るまでの朔との思い出が流れ出す。ダメだ、これ走馬灯だ。
私、このまま死ぬのかな。
混濁する意識の中で、冷静に俯瞰している自分がいた。
でも、そしたら、もう朔に会えなくなる。それは嫌だ。
それなのに、気が今にも遠のきそうだ。私の周りを囲む喧騒を耳が拾わなくなった後すぐに瞼が重くなって、目の前が暗転した。
ボロボロだった私と結婚しようと言ってくれた朔を信じよう。
そのために、今日は朔の好きなもの作って待ってよう。
といっても、カレーライスだ。私が失敗しない数少ない料理のひとつ。
「あ、買い物して帰ろうと思ってたんだった」
料理のことで、明日の朝食のパンがもうないことを思い出す。
いつものベーカリーに寄ろうとマンションの手前で方向転換した。
その時だ。公園から女の子が勢いよく走ってくる。歳の頃から幼稚園か小学校低学年くらい。
「ちょっと待ってよー」
その後を男の子が追いかけていく。女の子よりちょっと身体が小さめで、ボールを抱えてちょこちょこと走る。
朔もあんな感じだったな。
私よりも小柄で女の子みたいだった。大人しい子供だったけど、私の後を追いかけてくるのが可愛くて。それをするのが私だけだったから、幼いながらに優越感というか、心がときめいたものだ。
なんだかんだで、私、昔から朔のこと好きだったんだな。
歩きながら思い出を回想し始めた時、男の子の手からボールが落ちた。足に当たって転がるそれを慌てて追いかける。
ボールが道路側にはみ出た先にバイクが見えた。男の子は気づかずボールに向かって手を伸ばす。
危ない!
声が出る前に身体が動いていた。小さな身体を前へと突き飛ばす。
その瞬間衝撃があって、視界が暗くなる。次に目を開いたら目の前が空一色だった。身体を少しでも動かそうとしたら、身体に激痛が走る。道路の上に転がって天を仰ぐしかない。
「もうすぐ救急車くるからね!しっかり!」
近くで誰かが私に声をかけてくれる。答えようにも頭もガンガンと痛くて声が出ない。これは頭を打ったかもしれない。目の前で現在に至るまでの朔との思い出が流れ出す。ダメだ、これ走馬灯だ。
私、このまま死ぬのかな。
混濁する意識の中で、冷静に俯瞰している自分がいた。
でも、そしたら、もう朔に会えなくなる。それは嫌だ。
それなのに、気が今にも遠のきそうだ。私の周りを囲む喧騒を耳が拾わなくなった後すぐに瞼が重くなって、目の前が暗転した。