エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
私と仲良くしていた子たちも、萌以外はハブられるのを恐れてよそよそしくなるし、影響力のある女子生徒で美人だから、一部の男子も面白半分でいじめに参加し始める。周囲からここまで追い込まれたことのない私はパニックで、弁解しようにも遠回しにしか攻撃してこない人たちに打つ手がなくて、日々学校に行くのも嫌になっていった。
そんな時だった。
クラスの男子が「おい、淫乱」と私に向かって言った。でも、遠くからだから私に言ったのは間違いなくても、確固たる証拠にはならない。私の周りの子たちも複数いる。みんな気まずそうに目を背けていた。
もう嫌だ。
じわりと涙腺が崩壊して目の前が曇りだす。淫乱って言うけど、私は未だに誰ともキスどころかろくに手を繋いだことのない、むしろあか抜けない女なのに、どうしてそんなことを言われなければならないのだろうかと悔しさと惨めさで唇を噛みしめた。
その時だ。ガシャンと耳を覆うほどの大きな音がした。
俯いていた顔を上げると、机と椅子、そして、さきほど私に悪口を投げた男子が仲良く倒れていた。
クラス全員の視線は倒れた男子から黒板前へ。朔が蹴りあげた足を下ろしたところだった。
「おい、今、柚瑠に何言った?」
朔は倒れた男子に問う。相手はなんとか起き上がったものの恐れ戦いて声が出ない。朔がぐるりと首を回してその友達に目を向けると。その男子までもがひっと息を呑んだ。
「あ、いや、別に、お、俺は言ってな……」
「こいつにちょっかい出すな。おい、米谷。お前もだ。次やったら女でも容赦しねぇぞ」
米谷というのは私をハブっていた女子生徒だった。教室の隅で私が詰られていたのを友達とクスクスと笑って見ていた。もうその笑みは引っ込んで硬直している。
朔はその年の極真空手の全国大会で優勝していた。朔の祖父が経験者で、こちらに引き取られた頃から近くの道場に習いにいっていたのだ。学校でも表彰されていたし、周知の事実だった。だから、朔は社交的ではないのに、みんなから一目置かれていた。鋭い目つきと相まって、キレさせたら怖そうな人ナンバーワンだ。学校では私とそんなに一緒にいないから、中学校からの人間には幼馴染とは知られていなかった。
そんな時だった。
クラスの男子が「おい、淫乱」と私に向かって言った。でも、遠くからだから私に言ったのは間違いなくても、確固たる証拠にはならない。私の周りの子たちも複数いる。みんな気まずそうに目を背けていた。
もう嫌だ。
じわりと涙腺が崩壊して目の前が曇りだす。淫乱って言うけど、私は未だに誰ともキスどころかろくに手を繋いだことのない、むしろあか抜けない女なのに、どうしてそんなことを言われなければならないのだろうかと悔しさと惨めさで唇を噛みしめた。
その時だ。ガシャンと耳を覆うほどの大きな音がした。
俯いていた顔を上げると、机と椅子、そして、さきほど私に悪口を投げた男子が仲良く倒れていた。
クラス全員の視線は倒れた男子から黒板前へ。朔が蹴りあげた足を下ろしたところだった。
「おい、今、柚瑠に何言った?」
朔は倒れた男子に問う。相手はなんとか起き上がったものの恐れ戦いて声が出ない。朔がぐるりと首を回してその友達に目を向けると。その男子までもがひっと息を呑んだ。
「あ、いや、別に、お、俺は言ってな……」
「こいつにちょっかい出すな。おい、米谷。お前もだ。次やったら女でも容赦しねぇぞ」
米谷というのは私をハブっていた女子生徒だった。教室の隅で私が詰られていたのを友達とクスクスと笑って見ていた。もうその笑みは引っ込んで硬直している。
朔はその年の極真空手の全国大会で優勝していた。朔の祖父が経験者で、こちらに引き取られた頃から近くの道場に習いにいっていたのだ。学校でも表彰されていたし、周知の事実だった。だから、朔は社交的ではないのに、みんなから一目置かれていた。鋭い目つきと相まって、キレさせたら怖そうな人ナンバーワンだ。学校では私とそんなに一緒にいないから、中学校からの人間には幼馴染とは知られていなかった。