エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
それを聞いたのは朔の祖母の葬式が終わって、ひと月くらい経った時。学校で広まった噂から知った。朔からは一切聞いていなかっただけに驚いたし、ショックだった。夏休み中にもう日本を経つ。あと二カ月もなかった。当たり前に一緒だった朔がいなくなる。その言葉だけが宙に浮いたみたいに現実味がなくて、なかなか実感できなかった。
朔がいつもどおりしれっとした顔で登校していたから余計信じららなかった。だけど、周囲は朔の転校にお別れムードを漂わせていた。それがすごく居心地が悪くて嫌だった。夏休み前にクラスでお別れ会をした。放課後有志だけで集まってカラオケに行くだけなんだけど、クラスのほとんどが集まった。あれだけ周囲と馴染めずにいた朔はすっかりクラスメイトの信頼を集めるまでに成長していた。それがすごく感慨深かったのに、そこでも朔はいつもどおり愛想を振り撒くわけでもなく。最後に「ありがとな」と淡泊に礼を言った。
***
「ん……」
夢から目を覚ましたら、朝日の眩しさにまた瞼を閉じる。しまった、カーテン閉じきれてなかった。いつもちゃんと閉めてるのに、なんで……。
そこでがっと昨日の記憶が蘇ってくる。
結婚式の後、朔に家まで送ってもらって、お風呂入ってベッドに倒れる勢いで眠りについた。
「はぁ、顔パンパン」
起き上がって姿見を見てみると、疲れと泣いたせいで顔がひどい有様だった。
丸い壁かけ時計を見れば八時前。ニートだからといえ寝坊していられる身分ではないので、二階の自室から一階へと降りていく。階段を降りてすぐ右手のドアを開けばダイニングキッチンだ。ドアを開けたらテーブルに母お手製の健康管理ばっちりの和食が並んでいて……。
「あ、おはよー」
「うん、おは……」
こちらを振り返る母と父の前で朔がお味噌汁の椀に口をつけるところだった。受け流しそうになって思わず二度見する。間違いなく朔だ。
「え、なんでいるの!?」
あまりに我が家の食卓に馴染みすぎている。いや、だからなんで朔が家に?
「昨日、隣に泊まったんだ。叔母さん旅行でいないけど、鍵はもらってたから」
「それで、ちょうどお父さんがランニングで帰ってきたところに朔くんと会ってね。朝ごはんをコンビニまで買いに行くっていうから、うちで食べたらって言ったの」
「みんなで食べるほうがいいだろう」
「ありがとうございます」
朔がいつもどおりしれっとした顔で登校していたから余計信じららなかった。だけど、周囲は朔の転校にお別れムードを漂わせていた。それがすごく居心地が悪くて嫌だった。夏休み前にクラスでお別れ会をした。放課後有志だけで集まってカラオケに行くだけなんだけど、クラスのほとんどが集まった。あれだけ周囲と馴染めずにいた朔はすっかりクラスメイトの信頼を集めるまでに成長していた。それがすごく感慨深かったのに、そこでも朔はいつもどおり愛想を振り撒くわけでもなく。最後に「ありがとな」と淡泊に礼を言った。
***
「ん……」
夢から目を覚ましたら、朝日の眩しさにまた瞼を閉じる。しまった、カーテン閉じきれてなかった。いつもちゃんと閉めてるのに、なんで……。
そこでがっと昨日の記憶が蘇ってくる。
結婚式の後、朔に家まで送ってもらって、お風呂入ってベッドに倒れる勢いで眠りについた。
「はぁ、顔パンパン」
起き上がって姿見を見てみると、疲れと泣いたせいで顔がひどい有様だった。
丸い壁かけ時計を見れば八時前。ニートだからといえ寝坊していられる身分ではないので、二階の自室から一階へと降りていく。階段を降りてすぐ右手のドアを開けばダイニングキッチンだ。ドアを開けたらテーブルに母お手製の健康管理ばっちりの和食が並んでいて……。
「あ、おはよー」
「うん、おは……」
こちらを振り返る母と父の前で朔がお味噌汁の椀に口をつけるところだった。受け流しそうになって思わず二度見する。間違いなく朔だ。
「え、なんでいるの!?」
あまりに我が家の食卓に馴染みすぎている。いや、だからなんで朔が家に?
「昨日、隣に泊まったんだ。叔母さん旅行でいないけど、鍵はもらってたから」
「それで、ちょうどお父さんがランニングで帰ってきたところに朔くんと会ってね。朝ごはんをコンビニまで買いに行くっていうから、うちで食べたらって言ったの」
「みんなで食べるほうがいいだろう」
「ありがとうございます」