エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
「もしもし?」
『あ、柚瑠、どう?ちゃんとできてる?朔くんに迷惑かけてない?』
出て早々、矢継ぎ早に疑問符の嵐が襲ってくる。四時間前に別れたのに、もう娘の動向が心配になったらしい。そうなるようなことになった自覚があるだけに怒れない。
「かけてないよ」
『それならいいんだけど。あなた鈍くさいところあるから、朔くんの言われたことちゃんときくのよ』
「わかったって!もう寝るから切るよ!」
小言に耐え切れず電話を切った。怒れないとは思ったものの、やはり延々と聞く気にはなれない。
「ったく、子供扱いして」
「親にとってはいつまでも子供なんだろ」
不貞腐れる私に朔がふっと笑った。形の良い唇の端が上がるのは、見ていて内心ドキリとする。それを隠すように頭を下げた。
「何?」
「……これからお世話になります」
「おう、まぁ気楽にいこうぜ。全く知らない仲でもないし」
その言葉に頭を上げて朔を見る。私よりも頭一つ分ほど高い位置にあるその顔はやはり平静としている。だからこそ、何も言えなかった。
代わりに、頭の中であの日の記憶が呼び起こされる。奥に微かに燻っていた火が風で煽られて大きく焚けるように。
『あ、柚瑠、どう?ちゃんとできてる?朔くんに迷惑かけてない?』
出て早々、矢継ぎ早に疑問符の嵐が襲ってくる。四時間前に別れたのに、もう娘の動向が心配になったらしい。そうなるようなことになった自覚があるだけに怒れない。
「かけてないよ」
『それならいいんだけど。あなた鈍くさいところあるから、朔くんの言われたことちゃんときくのよ』
「わかったって!もう寝るから切るよ!」
小言に耐え切れず電話を切った。怒れないとは思ったものの、やはり延々と聞く気にはなれない。
「ったく、子供扱いして」
「親にとってはいつまでも子供なんだろ」
不貞腐れる私に朔がふっと笑った。形の良い唇の端が上がるのは、見ていて内心ドキリとする。それを隠すように頭を下げた。
「何?」
「……これからお世話になります」
「おう、まぁ気楽にいこうぜ。全く知らない仲でもないし」
その言葉に頭を上げて朔を見る。私よりも頭一つ分ほど高い位置にあるその顔はやはり平静としている。だからこそ、何も言えなかった。
代わりに、頭の中であの日の記憶が呼び起こされる。奥に微かに燻っていた火が風で煽られて大きく焚けるように。