エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
「私もね、彼ができたの」
英里子が真美の結婚話の間に言葉を落とす。パスタを捲いていたフォークを置いて、ナプキンで口元拭く左手には薬指にダイヤがついたゴールドの指輪が光っている。
チラリと私を見遣るのと目が合った。怒りなのか恐怖なのか言いようのない震えが来た。
「どんな人?」
真美が首を傾げて問う。
「前から友達だったんだけど、向こうが彼女と別れたから私と付き合おうって。相性もいいし。私たちも年齢的にそろそろ結婚かなと思う」
私たち。
チクチクとこちらを刺してくる言い方なのは、自意識過剰なのか。もうわからない。とにかく、ここから早く逃げ出したい。
「そういえば、柚は彼氏とは順調?」
「あ、わ……別れたの」
何気ない知佳からの問いは不意打ちだった。でも、私は視線を泳がせて正直に答える。途端に気まずい空気が流れる。
「そうだったんだ……なんかごめん」
「ううん、気にしないで。一年くらい前だし。仕事もね、身体壊して辞めて、今休んでるの」
ああ、みじめ。
みじめだけど、仕方ない。ここで下手に隠すほうがもっとみじめだ。何より私は何も悪いことをしていないはず。英里子に気を遣うほど善人でもない。
「体調悪いなら無理して来なくてもよかったんじゃない?みんな気を遣うわ」
英里子の言葉がグサリと胸に刺さる。彼女の言い分もわかる。事実、祝いの席で気を遣わせている。
英里子が真美の結婚話の間に言葉を落とす。パスタを捲いていたフォークを置いて、ナプキンで口元拭く左手には薬指にダイヤがついたゴールドの指輪が光っている。
チラリと私を見遣るのと目が合った。怒りなのか恐怖なのか言いようのない震えが来た。
「どんな人?」
真美が首を傾げて問う。
「前から友達だったんだけど、向こうが彼女と別れたから私と付き合おうって。相性もいいし。私たちも年齢的にそろそろ結婚かなと思う」
私たち。
チクチクとこちらを刺してくる言い方なのは、自意識過剰なのか。もうわからない。とにかく、ここから早く逃げ出したい。
「そういえば、柚は彼氏とは順調?」
「あ、わ……別れたの」
何気ない知佳からの問いは不意打ちだった。でも、私は視線を泳がせて正直に答える。途端に気まずい空気が流れる。
「そうだったんだ……なんかごめん」
「ううん、気にしないで。一年くらい前だし。仕事もね、身体壊して辞めて、今休んでるの」
ああ、みじめ。
みじめだけど、仕方ない。ここで下手に隠すほうがもっとみじめだ。何より私は何も悪いことをしていないはず。英里子に気を遣うほど善人でもない。
「体調悪いなら無理して来なくてもよかったんじゃない?みんな気を遣うわ」
英里子の言葉がグサリと胸に刺さる。彼女の言い分もわかる。事実、祝いの席で気を遣わせている。