エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
でも、英里子が来ることがわかっていれば来なかった。あなたがあんなことをしなければ、私は倒れていなかったかもしれない。文句が口から漏れそうになってぐっと唇を噛む。
「そんな言い方ないでしょ」
その時、真美の凛とした声が場を引き締めた。
「柚、今日は私のために来てくれてありがとう」
私を見てにこりと愛らしく微笑む。
でも、英里子を見る真美の双眸がすぐに細められる。不快感を隠そうとしない。真美はいつも優雅で朗らかに笑う品の良さを持つ。でも、無礼な態度には毅然として正しにいく真っ直ぐな性格だった。普段優しいだけに、怒らせると怖い。
「前から気になってはいたけど、英里子は柚にちょっと当たりがきついわよね」
「そんなことないわ」
「そう?でも、さっきのは仮に『仲がいい』としても失礼よ。謝るべきだわ」
真美と英里子との間に火花が散る。私のために真美まで不快な状況に巻き込んでいる。私は仲裁しようと慌てて前のめりになった。
「あ、あの……」
「Hi,beauties!」
突然、流れてきた英語に驚いて振り向くと、青い瞳と目が合う。少し長めの金髪にたれ目の甘いのマスク。ウェイターかと一瞬思ったけど、上質な紺色のスーツと佇まいからステータスがある人物だとわかった。
私を含めて全員が突然現れた外国人を前に固まっていると、朔が慌てた様子でレストランに入ってくるからさらに私は瞠目した。
「おい、アレク!何、勝手に入ってんだ!」
「君の奥さんが近くにいるっていうからわざわざ見に来たんじゃないか」
「今日はだめだって言っただろ」
レストラン内で声を抑えてはいるけど、半分呆れ、半分怒っている朔。
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