エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
営業部に鳴る電話のコール音。それが警笛みたいに鼓膜を揺るがし、頭にガンガン響く。
息ができない。
首元を抑えて激しく胸を上下させても少ししか酸素が入ってこない。目の前がチカチカ点滅して、グルリと視界が回る。一度きりではなくグルグルと加速していく。平衡感覚がなくなって、立っていられず床に座り込む。なんだか、遠くで誰かが呼ぶ声がしたけど、苦しさと恐慌に陥り、把握できない。ついに目の前が真っ暗になった。
目覚めた時には白い天井を見上げていた。私は救急車で病院に運ばれたのだ。倒れた私の側に総務の南さんが付き添ってくれていた。
検査をした結果、過労とショックによる過呼吸ではないのかという診断だった。貧血がひどいのもあり、仕事を休むように言われた。会社にその旨を伝えて次の日休んだ。そして、次の日も、また次の日も。会社に行こうとしたら、吐き気やめまいで動けなくなった。そして、ひと月その繰り返しをしてついに会社を辞めた。
思い通りにならない身体に無気力になって、部屋に閉じこもる日々が続いた。そこに母が連絡を返さない私を心配して訪ねてきた。そこで、廃人同様の私を見て、倒れたことも仕事に行けなくなってやめたこともバレて、すぐに実家に強制送還された。
倒れるまで疲労していた事実が両親ともにショックだったらしい。私は自分でいうのもなんだけど、子供の頃から優等生として親の手をあまり煩わせずに人生を選んできたところがあったから青天の霹靂だったのだろう。
実家に戻ったからと言って再就職先を探す気も湧いてこず、相変わらず部屋に引きこもっていた。ただ、今日だけは小学生の頃から仲がいい萌の結婚式だから、頑張って出てきた。萌からも「絶対に来てね」と念押しされていたし、この日だけは出席すると決めていた。ただ、やはり精神的にきついものがある。目の前の幸せな親友を妬むわけではないが、幸せな人たちを前にすると、今の自分の空っぽさが明確に浮き彫りになって、惨めさで押しつぶされそうになる。
そんな中で朔に話しかけるなんて。だって、話しかけたら、必然的に自分のことも話さなければならない。久しぶりに会う幼馴染に嘘をつきたくない。だからといって醜態を晒しに行けるほどメンタルが強くない。自殺行為だ。絶対に嫌だ。
披露宴が終わったら、即帰る。
そう心に言い聞かせて、私は目立たぬようテーブルへと戻った。
息ができない。
首元を抑えて激しく胸を上下させても少ししか酸素が入ってこない。目の前がチカチカ点滅して、グルリと視界が回る。一度きりではなくグルグルと加速していく。平衡感覚がなくなって、立っていられず床に座り込む。なんだか、遠くで誰かが呼ぶ声がしたけど、苦しさと恐慌に陥り、把握できない。ついに目の前が真っ暗になった。
目覚めた時には白い天井を見上げていた。私は救急車で病院に運ばれたのだ。倒れた私の側に総務の南さんが付き添ってくれていた。
検査をした結果、過労とショックによる過呼吸ではないのかという診断だった。貧血がひどいのもあり、仕事を休むように言われた。会社にその旨を伝えて次の日休んだ。そして、次の日も、また次の日も。会社に行こうとしたら、吐き気やめまいで動けなくなった。そして、ひと月その繰り返しをしてついに会社を辞めた。
思い通りにならない身体に無気力になって、部屋に閉じこもる日々が続いた。そこに母が連絡を返さない私を心配して訪ねてきた。そこで、廃人同様の私を見て、倒れたことも仕事に行けなくなってやめたこともバレて、すぐに実家に強制送還された。
倒れるまで疲労していた事実が両親ともにショックだったらしい。私は自分でいうのもなんだけど、子供の頃から優等生として親の手をあまり煩わせずに人生を選んできたところがあったから青天の霹靂だったのだろう。
実家に戻ったからと言って再就職先を探す気も湧いてこず、相変わらず部屋に引きこもっていた。ただ、今日だけは小学生の頃から仲がいい萌の結婚式だから、頑張って出てきた。萌からも「絶対に来てね」と念押しされていたし、この日だけは出席すると決めていた。ただ、やはり精神的にきついものがある。目の前の幸せな親友を妬むわけではないが、幸せな人たちを前にすると、今の自分の空っぽさが明確に浮き彫りになって、惨めさで押しつぶされそうになる。
そんな中で朔に話しかけるなんて。だって、話しかけたら、必然的に自分のことも話さなければならない。久しぶりに会う幼馴染に嘘をつきたくない。だからといって醜態を晒しに行けるほどメンタルが強くない。自殺行為だ。絶対に嫌だ。
披露宴が終わったら、即帰る。
そう心に言い聞かせて、私は目立たぬようテーブルへと戻った。