エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
何か聞かれるたびにビクビクするのも、嘘つくのも本気できつい。胃がしくしくと痛み、豪華なコース料理もほとんど食べられずスタッフに回収されていく。
本当はわかっている。この劣等感や罪悪感を根本的に解決するには、早く立ち直って再就職するのが一番。でも、今まで自分を押し殺して働いてきた分、次に何がしたいのかわからない。また馬車馬のように働くのは身体が持たないし、気力もない。
部長に怒鳴ら続けて、今では大声で話す男性に過敏に反応してしまう。胸や喉が圧迫されるような感覚がして、呼吸がしにくくなる。こうなると、過呼吸の症状が出て、目眩でその場から動けなくなる。この状態で社会復帰できるのか。
両親はいい年だから結婚したらいいと言うけど、誰がアラサーかつニートの引きこもりを嫁にもらってくれるのだろうか。
でも、萌の結婚で気持ちが焦らないわけでもない。私の同級生たちはみんな結婚していた。私も結婚願望はある。相手がいないだけで……。
と思ったところで、宏尚の顔が浮かんできて慌てて打ち消した。あの後、ふたりとは会っていない。向こうから何の音沙汰もないということが何よりの答えだと思う。
私が肩身の狭い思いをしている間にも、新郎新婦が生まれてから出会いまでをまとめたビデオや、来賓客の出し物、感動的な両親への手紙や新郎の挨拶まで、滞りなく進んで披露宴は終わった。
「柚瑠、帰るの?」
式場を出たところで同級生の紀香ちゃんに呼び止められる。私は終始影を薄くして気づかれないよう去ろうとしていたからビクッと肩が跳ねあがった。
「う、うん」
「二次会あるみたいだけど」
「前田帰るの?」
私たちの間に入ってきたのは、篠田くんだ。がっちりとした体形は中学時代柔道部だった時のまま。呼気がかかると、酒臭い。結構飲んだのだろう。顔も赤ら顔だ。と思っていたらガシッと肩を掴まれた。
「せっかく懐かしいメンバー集まったんだし、行こうぜ」
「ええっと!その……」
触らないでとはっきり言えない。男の手だと思うとぞわりと鳥肌が立つ。男性に対しての嫌悪感が這い上がってくる。激昂する上司や浮気をする元彼、罪を着せた杉本さんとの記憶が脳裏を駆け巡る。
ま、まずい。
喉が潰されたように狭くなり、少しだけ摘んだ料理が胃の中でぐっと押し戻されようとしている。「やめて」と叫びそうになった時、肩から急に重みがなくなった。
本当はわかっている。この劣等感や罪悪感を根本的に解決するには、早く立ち直って再就職するのが一番。でも、今まで自分を押し殺して働いてきた分、次に何がしたいのかわからない。また馬車馬のように働くのは身体が持たないし、気力もない。
部長に怒鳴ら続けて、今では大声で話す男性に過敏に反応してしまう。胸や喉が圧迫されるような感覚がして、呼吸がしにくくなる。こうなると、過呼吸の症状が出て、目眩でその場から動けなくなる。この状態で社会復帰できるのか。
両親はいい年だから結婚したらいいと言うけど、誰がアラサーかつニートの引きこもりを嫁にもらってくれるのだろうか。
でも、萌の結婚で気持ちが焦らないわけでもない。私の同級生たちはみんな結婚していた。私も結婚願望はある。相手がいないだけで……。
と思ったところで、宏尚の顔が浮かんできて慌てて打ち消した。あの後、ふたりとは会っていない。向こうから何の音沙汰もないということが何よりの答えだと思う。
私が肩身の狭い思いをしている間にも、新郎新婦が生まれてから出会いまでをまとめたビデオや、来賓客の出し物、感動的な両親への手紙や新郎の挨拶まで、滞りなく進んで披露宴は終わった。
「柚瑠、帰るの?」
式場を出たところで同級生の紀香ちゃんに呼び止められる。私は終始影を薄くして気づかれないよう去ろうとしていたからビクッと肩が跳ねあがった。
「う、うん」
「二次会あるみたいだけど」
「前田帰るの?」
私たちの間に入ってきたのは、篠田くんだ。がっちりとした体形は中学時代柔道部だった時のまま。呼気がかかると、酒臭い。結構飲んだのだろう。顔も赤ら顔だ。と思っていたらガシッと肩を掴まれた。
「せっかく懐かしいメンバー集まったんだし、行こうぜ」
「ええっと!その……」
触らないでとはっきり言えない。男の手だと思うとぞわりと鳥肌が立つ。男性に対しての嫌悪感が這い上がってくる。激昂する上司や浮気をする元彼、罪を着せた杉本さんとの記憶が脳裏を駆け巡る。
ま、まずい。
喉が潰されたように狭くなり、少しだけ摘んだ料理が胃の中でぐっと押し戻されようとしている。「やめて」と叫びそうになった時、肩から急に重みがなくなった。