エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
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「はい、株式会社シソーラスでございます」
電話が鳴ってワンコールで受話器を取る。新しいオフィスはガラス張りで日中、日差しが差し込むと照明がいらないくらい明るい。観葉植物が部屋の角に置かれ、インテリアやデスクなども北欧スタイルで全体的にもかなりお洒落なカフェみたいに写る。
ここはインテリア商品を扱う会社だから世界のこだわりの品々が集まってくる。
応接室やお客様が入られる会議室なんかは椅子が革張りで、京子さんが「一脚三十万するのよね~」なんてさらりと言った時には、掃除する時も丁寧に扱うようになった。
立ち上げて間もなく、社員が十名ほどの小さな会社。だけど、活気が満ち溢れていた。そして、やはり仕事量が多い。私の仕事は事務兼雑用係。社長や営業の人たちのスケジュール管理も最近任されるようになった。
「前田さん、今手空いてる?」
「あ、はい」
「荷ほどき手伝ってくれない?サンプルが届いて」
同い年の佐々木さんに頼まれて席を立つ。事務員は彼女とふたり。
私は旧姓で働かせてもらっている。社長の息子の嫁だと周囲が気を遣うからと私がお願いした。社長を除けば総務の人しか知らないと思う。
運び込まれた段ボールを小会議室に運び梱包を解いていく。新しい照明スタンドだ。これは新しくオープンするホテルの客室に納品予定のもの。
「外国人のお客様にも受けがいいように、障子の紙を使ってるんだって」
「すごいですね」
「そうだよね!でも、これがあの一流ホテルに使われると思うとワクワクするよね」
きゃいきゃいと届いたインテリアをデスクの上に並べていく。
ここで働いて二週間が経つ。久しぶりの会社勤めで、最初は緊張で心臓が常に早鐘を打つ状態だったのが、今はだいぶ慣れてきた。
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