エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
サンプルを会議室に出し終えてからデスクに戻ると、ガラスで区切られた社長室から京子さんに手招きされる。私は引きかけた椅子を戻して、社長室へ向かった。
「失礼します」
ノックをして中に入ると、京子さんはデスクからにこりと微笑みをくれる。
「お疲れさま、仕事はどう?」
「はい、今のところ問題はないです」
「午後の会議の後にクライアントのところに行くことになったから、定時は超えるだろうし柚ちゃんは時間通り帰ってね。今日はごはんもいらないから」
「わかりました」
ウェブ上の社長スケジュールを後で修正しておこうと思いながら頷く。京子さんは満足げな表情でデスクに両肘をついた。
「いや~、柚ちゃんが来てくれてほんと助かるわ。手際いいし」
「そんなことは……まだわからないことだらけでみなさんの手間をとらせてしまうこともありますし」
「誰もが初めはそうでしょ。でも、根本的に人の動向もちゃんとチェックして、困ってたら助けてくれるし、些細なことも記憶して教えてくれるじゃない?そういうのなかなかできることじゃないわ。努力と才能の賜物よ」
「あ、ありがとうございます」
面と向かって褒められると、お世辞でも照れてしまう。この会社は風通しがいい。前の会社と違って理不尽なことで怒鳴られたりしない。海外の会社とやり取りがあるから、フレックスタイムで自由に働ける社風。役職はあるにはあるけど、みんなが公平に意見が言える開けた場所で、すごく社員のことが考えられている。働く人も親切で私がミスしても怒らず、みんな手伝いながら丁寧に教えてくれる。
私がなんだかんだで働けているのは、そういう好条件が揃っているからだ。
社長室を出ようと踵を返しかけた時、コンコンとノックがした。ガラスのドアを開けて入ってきたのは、副社長の神崎さんだ。
「そろそろお昼行きます?」
日焼けした小麦色の肌と高い身長、わりとがっちりした体躯からかなり重圧感がある男性。でも、たれ目で顔が甘く整っている。王子顔なのに、野性的な魅力がある。仕事で一緒に街を歩けば振り返る女性も多いけど、私はそのギャップが少し苦手。こういう男男している人はまだ身構えてしまう。
神崎さんに京子さんはひらひらと手を振った。
「私はまだいいわ。柚ちゃんいってらっしゃい」
「え、でも」
「いいのいいの。神崎くんの奢りなんだし」
「え、俺奢るって言ってないけど」
「若い子とランチ行けるんだから。むしろお金払って行ってもらうくらいでしょ」
「まぁそうか。じゃあ行こうか。前田さん」
「失礼します」
ノックをして中に入ると、京子さんはデスクからにこりと微笑みをくれる。
「お疲れさま、仕事はどう?」
「はい、今のところ問題はないです」
「午後の会議の後にクライアントのところに行くことになったから、定時は超えるだろうし柚ちゃんは時間通り帰ってね。今日はごはんもいらないから」
「わかりました」
ウェブ上の社長スケジュールを後で修正しておこうと思いながら頷く。京子さんは満足げな表情でデスクに両肘をついた。
「いや~、柚ちゃんが来てくれてほんと助かるわ。手際いいし」
「そんなことは……まだわからないことだらけでみなさんの手間をとらせてしまうこともありますし」
「誰もが初めはそうでしょ。でも、根本的に人の動向もちゃんとチェックして、困ってたら助けてくれるし、些細なことも記憶して教えてくれるじゃない?そういうのなかなかできることじゃないわ。努力と才能の賜物よ」
「あ、ありがとうございます」
面と向かって褒められると、お世辞でも照れてしまう。この会社は風通しがいい。前の会社と違って理不尽なことで怒鳴られたりしない。海外の会社とやり取りがあるから、フレックスタイムで自由に働ける社風。役職はあるにはあるけど、みんなが公平に意見が言える開けた場所で、すごく社員のことが考えられている。働く人も親切で私がミスしても怒らず、みんな手伝いながら丁寧に教えてくれる。
私がなんだかんだで働けているのは、そういう好条件が揃っているからだ。
社長室を出ようと踵を返しかけた時、コンコンとノックがした。ガラスのドアを開けて入ってきたのは、副社長の神崎さんだ。
「そろそろお昼行きます?」
日焼けした小麦色の肌と高い身長、わりとがっちりした体躯からかなり重圧感がある男性。でも、たれ目で顔が甘く整っている。王子顔なのに、野性的な魅力がある。仕事で一緒に街を歩けば振り返る女性も多いけど、私はそのギャップが少し苦手。こういう男男している人はまだ身構えてしまう。
神崎さんに京子さんはひらひらと手を振った。
「私はまだいいわ。柚ちゃんいってらっしゃい」
「え、でも」
「いいのいいの。神崎くんの奢りなんだし」
「え、俺奢るって言ってないけど」
「若い子とランチ行けるんだから。むしろお金払って行ってもらうくらいでしょ」
「まぁそうか。じゃあ行こうか。前田さん」