エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
***


「というわけで、神崎さんと近々話し合うとおっしゃってましたよ」
『ありがとー!すばらしいよ、君は!』
電話口で事の詳細を話したら、神崎さんの歓喜の声が瞬時に返ってくる。
大声すぎて思わずスマホから耳を離す。それでも余裕で声が漏れ聞こえてくる。相当嬉しいらしい。少し声が収まってきたあたりで私は再びスマホを耳元に運ぶ。
「お褒めに預かり光栄です。大変、というよりは緊張しました」
『ごめんなぁ。でも、本音が聞けてよかったよ。俺の前だとこういう時変に取り繕うからさ。京子さんもマイペースに見えて、周囲のこと第一に考えて自分を後回しにしてるんだよねぇ。しかも、気づいてないんだよなぁ』
「そこを含めて好きなんでしょ?」
『そう!好き!』
これまた大声量でキンキンと耳に響く。だめだ、京子さんのことになるとテンションが抑えられない。
「神崎さん、ちょっと声大きいです!」
『あ、ごめん。嬉しすぎて』
「わかってますけど…・・それじゃあ、約束お願いしますね」
『任せておいて。もう姉貴には伝えたし、ひとりくらい大丈夫って言ってたから。いつからがいい?』
「私は、早いほうが……平日の仕事帰りでも大丈夫です」
『わかった。そう伝えとく。詳しくはまた知らせるな』
「ありがとうございます」
『苦手なことを習おうとするなんてよっぽど彼のこと好きなんだな』
「それはまぁ……好き、ですよ」
こちらはぼそぼそと呟く。他人様に自分の恋愛事を言うなんて、恥ずかしい。普段ならはぐらかす。
でも、今日はどうにも口から溢れた。私も京子さんと話して気持ちが高ぶっているようだ。
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