客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
今日はこれでお終い。ということは、匠さんとの巡礼もこれで終わる。
駅まで送ってくれるかな……そう思うのに、匠さんともう少し一緒にいたかったとも思う。それくらい楽しい時間だった。
でも楽しい時間には終わりが来るのは当たり前。ふと頭に彼氏が別の女とホテルに入る場面を思い出して悲しくなった。私はまたあの辛い現実に向き合わなければならない。
その時だった。匠の手が二葉の手に重なり、優しく握った。しかし表情は緊張が見て取れる。
「二葉ちゃん、明日って予定ある?」
二葉は首を横に振る。
「あのさ……もっと一緒にいたいって言ったら嫌?」
二葉は再び首を横に振る。
「俺さ、三日で回るつもりだったからホテルをとってあるんだ……良かったら明日も一緒に回らない?」
そこで初めて首を縦に振った。
不謹慎だろうか。警戒心がたりないだろうか。それでも匠さんと一緒にいたい気持ちが勝ってしまった。
慎吾の顔が頭に浮かび、少しだけ罪悪感を感じる。だが二葉の指に匠の指が絡むと、久しぶりに感じるときめきに胸が熱くなる。
裏切られた絶望感と、同じことをしようとしている背徳感。
この人との関係だって、たった一夜のものかもしれない。それでも求められることの喜びを選んでしまうの。