客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二葉は唇を噛み締め、拳を強く握りしめる。

「……私、これから暴言を吐きますが許してください」
「……わかったわ」

 二葉は大きく深呼吸をすると、真梨子を抱いていた手を外し、彼女の両肩を掴む。そして真っ直ぐ真梨子を見つめた。

「あなたのご主人は最低です。クズです。奥さんがこんなに苦しい思いをしているのに、奥さんの心より自分のことしか選べないような男は優しいとは言いません。自己中です。結婚式で愛を誓うんですよね? 結婚は恋愛じゃないんです。お互いの人生を背負うんです。一人で生きるんじゃなくて、家族として生きるんです。それを全くわかっていない自分勝手な人です。お互いを思いやって、愛し合って、喧嘩したって許し合って、尊重し合うのが夫婦なんじゃないんですか⁈ 同じ方向を向いて、二人で壁に立ち向かうのが夫婦なんじゃないですか⁈ どうしてあなただけがこんなに我慢しないといけないんですか⁈ 私は……同じ女として、あなたにこんな思いをさせるご主人が許せないです!」

 二葉の目からも涙が溢れる。すると何故か真梨子が泣きながら笑い出した。

「あなた……変な子! 人の旦那をけちょんけちょんに言うなんて……」
「そ、そうですか……? だって話を聞いてたら悔しくなって……。でも……何も現実を知らない小娘の意見ですが……」
「そうね、本当よ。何も知らないくせに」
「……」
「でも少し懐かしかった……」

 大泣きをして息を切らす二葉を見ながら、真梨子はそっと目を閉じた。
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