客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「あなたって本当に面白い子ねぇ。でも……ちょっと目が覚めたかもしれない。私自身も忘れていたことを思い出した気がする……。好きだから、愛し合ってるからそばにいた。でも……確かに夫婦なのに向いてる方向が違っているのかもしれない……」
真梨子はハンカチで涙と鼻水を拭う。
「……六年前、匠にもそんな感じで話したの?」
「えっ……いや、こんな感じではないですが……」
「なるほどね。あなたに感化されたのね、きっと。あっ、でもあなた、私も匠とセックスしてるのよ。嫌だとか思わないの?」
「そうですねえ……まぁ気にならないと言えば嘘になりますけど、海外ドラマじゃよくある展開ですし」
「……あはは! 匠がベタ惚れなのもわかるわ。私も気に入ったもの。あなたの名前、教えてくれる?」
「あっ、雲井二葉です! 自己紹介が遅くてすみません……」
恥ずかしそうに下を向くと、真梨子は椅子から降りる。
「このハンカチ、もらっていい?」
「ど、どうぞ」
真梨子はカバンから財布を取り出すと、自分と二葉の代金を支払う。
「……私なりに答えを出すわ。ありがとう。じゃあね」
それだけ言い残し、真梨子は颯爽と店を後にした。残された二葉は、その場から身動きが取れなかった。