客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
唇が離れると、二葉は匠をぎゅっと抱きしめる。
「匠さんを傷つけたのはやっぱり許せないけど、彼女なりに苦しんでた……。だから彼女を責めきれない……」
「うん……」
「愛って何なのかな……私は愛はずっと続くものだなんて甘い考えを持ってる……でも現実はそうじゃない……」
「……愛イコール結婚になってない?」
「……そうかもしれない」
「恋も愛も同じ、始まりがあれば終わりもある。ただ、結婚は契約みたいなもので、愛し続けることが当然の義務みたいな感じがしない?」
「……しない。好きな人とずっと一緒にいられる約束みたいに思ってた……。これが甘いってことなのかな?」
すると匠は嬉しそうに笑って二葉にキスをする。
「二葉のそういうところ、俺は大好きだよ。俺の荒んだ心を温かくしてくれるんだ。でもそうじゃなくて、紙切れ一枚に縛られなくても、愛することは出来るってこと。でも……」
二葉はその続きを待つように、上目遣いで匠をじっと見つめる。
「……二葉はなんか危なっかしいし、騙されないか心配だし、紙切れ一枚で俺の元に繋ぎ止めるのもアリかもしれない……」
「……どういう意味?」
そこまで言って、匠ははっとする。これじゃあプロポーズみたいじゃないか。ダメだ、タイミング的に今じゃない。
「ほら、写経は紙一枚で仏様と繋がるわけだしね、本当は結婚もそういうふうに真剣に向き合うべきだよね」
苦し紛れに言ってみたが、口にした本人が一番意味がわかっていなかった。何言ってんだろ……俺……。
しかし二葉は嬉しそうに手を叩く。
「あぁ、確かに!」
目を輝かす二葉を見て匠は吹き出す。いやいや、どこまで真っ直ぐなんだよ。