客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
車が二十番札所の岩之上堂に到着すると、二人はお堂までの階段を降りていく。ここの手入れされた草木が二葉は好きだった。
「やっぱりお寺の庭園っていいよね。見ているだけで気持ちが落ち着く」
「季節折々の景色が見られるからね。お寺によって咲く花も違うから、また違う季節に来たくなる」
匠は足を止め目を閉じると、大きく息を吸い込んだ。その横顔を見ながら、二葉は胸がときめくのを感じる。
匠さんって本当に不思議。こういう仕草が自然に出ることにキュンとするし、取り留めのない会話だけど、こんな風に続くことが嬉しくて仕方ないの。
階段を降りると、二葉は居ても立っても居られず、思わず匠に抱きついた。
「ど、どうしたの?」
「……匠さんが好きだなぁって改めて思ってたところ」
「あはは! 何それ!」
「……馬頭観音様、私の煩悩だらけの頭をどうにかしてください……」
「それってお参り前に、良からぬことを考えてるってこと?」
「……」
匠は嬉しそうにニヤニヤしながら二葉の頬に手を添える。彼女は顔を真っ赤にして頷いた。
「じゃあ早く橋立堂に行かないと。馬頭観音様がお待ちかねだ」
あぁ、もう……だからそういうところが私の心を掴んで離さないって、匠さんはきっと気付いてないよね。