客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
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二十八番札所の橋立堂は、巨大な岩壁の前に立っている。お参りを済ませた二人はその壁を眺めていた。
「すごい岩壁。なんかやっぱり空気感が違うよね。しかもここに馬頭観音様がいらっしゃると思うと、更にグッとくるの」
「あぁ、そういえば煩悩は食べてもらえた?」
覚えてたのね……匠が声を上げてわらったので、二葉は恥ずかしくなってそっぽを向く。
納経所で御朱印をいただいくと、そのすぐ隣にある鍾乳洞の入り口が気になった。
「匠さんは鍾乳洞に入ったことある?」
「いや、ないかなぁ。入りたいの?」
「気になるけど、明日のために今日は頑張りたいから」
二葉はすたすたと歩き出すと、匠もその後に続く。
「それにこの後は過酷な観音院が待ってるでしょ? そのためにも今は体力を温存しないと」
「確かに。舐めてかかると痛い目みるからね。先を急いだ方がいいかも」
匠はふとあの過酷な階段を思い出す。想像するだけで足がすくんで身震いした。