客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
匠は二葉を見つめる。
「……二葉のことが好きだよ。好きになればなるほど、あの日の記憶が俺を不安にさせるんだ。またあの日みたいに、二葉が俺の手をすり抜けていなくなってしまう気がして怖くなる……」
初めて聞く匠の本音に、二葉は胸が苦しくなった。あの日のことが、それほどまでに彼を不安にさせてたってこと?
「だってあの日……匠さんも納得して別れたよね?」
「納得はしてなかったよ……でも二葉の考えを変えることは出来ないって思ったから諦めたんだ」
二葉の手を握る手の力が強くなる。
「あの時、二葉の手を掴めば良かった、車から下ろすべきじゃなかった……そんなことをずっと考えてた。変に聞き分けがいいふりをして、自分の意見を言わなかったことを後悔してた……だから今日、その過去を上書きしたくてここに来た」
自分が彼を傷つけていたことに、今頃になって気付かされるなんて……情けなくて悲しくなる。
「私、匠さんを傷付けてばかりいる……。こんな私でいいの?」
「ち、違うんだ、二葉。俺は傷付いてるんじゃなくて、二葉が新しい考え方を教えてくれてると思ってる。離れるのが辛いっていうのは、それだけ二葉を好きになったからだし、先生のことも俺が出来なかったことをやってくれた。むしろ嬉しいんだよ」
「……本当?」
「もちろん。二葉が好きで好きで仕方ないんだ。だからずっと俺のそばにいて欲しい」
彼の言葉を聞いて、二葉の表情が綻んでいく。愛されてると実感して嬉しくなる。