客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二葉は匠の手を取ると、にっこり微笑んだ。

「……匠さん、私これから車を飛び出そうとするから、熱烈で愛情たっぷりな言葉で引き留めてね」

 二葉の言葉を聞いて、匠は呆気にとられたように口をあんぐりと開けた。

「えっ……ちょっ……それってどういう意味⁈」
「言葉通りよ。私がキュンとするようなことをいっぱい言ってね。じゃあ、よーいスタート!」

 車のドアを開けようとした二葉の腕を、匠は意味がわからないまま慌てて掴んで引き寄せる。バランスを崩した二葉が、匠の胸の中に落ちた。

 匠は二葉を強く抱きしめる。そうだ、こうやって抱きしめて、絶対に離したらダメだったんだ。今更になって気が付いた。

「二葉が好きだ。どうしようもないくらい愛してる。あの日二葉はこの気持ちは錯覚だって言ったけど、そんなことないよ。こんなにも君を好きで離したくないんだ。あの頃から何も変わってない。むしろ気持ちはどんどん大きくなってる。だから……お願いだからずっと俺のそばにいて……二葉のいない未来なんて考えられないよ……」

 匠の言葉が終わると、二葉は彼の腕の中で真っ赤に染めた顔を両手で覆っていた。

 なんて破壊力かしら。もうどうにかなっちゃいそう……!
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