客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
だがそこではっと我に返ると、二葉は匠の顔を引き寄せキスをした。そう、今はあの日の記憶の上書き中。ならば同じことをしないと意味がないはず。
貪るようにキスをして、舌を絡めていく。あの日は別れのキスだった。でも今日は……。
唇が離れ、乱れた呼吸の中、二葉がそっと口を開く。
「私も愛してる……ずっとそばにいるよ……離れてなんかあげないんだからね……」
匠は潤んだ瞳で二葉を見つめると、慌ててエンジンをかける。
「早くホテルに戻ろう……ん……」
言いかけた彼の唇を二葉が塞いだ。
「待って……あと十秒だけでいいからキスしよ……」
匠自身にも火がついたかのように、十秒間の激しいキスが降り続く。ようやく離れたかと思うと、車が急発進をする。
「煽ったのは二葉だからね! ホテルに戻ったら覚悟しててよ!」
ぼんやりとした意識の中で二葉は、
「はーい……」
とだけ呟いた。