客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
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シャワーの音で目が覚めると、久しぶりに体の怠さを感じる。そして夜のことを思い出して、二葉は思わず吹き出した。
あんなに激しくお互いを求め合うなんて……あぁ、もう本当に幸せ過ぎる。
布団の中でそんなことを考えていると、浴室からバスローブを着た匠が出てきた。匠はベッドに座ると、にっこり微笑んで二葉の額にキスをする。
「おはよう。起きてた?」
「おはよう。今起きたところ。あまりにも体が怠くて動けないの」
二葉が言うと、匠は困ったように彼女の体をさすった。
「ちょっと夢中になり過ぎちゃった。ごめんね。あっ、朝食ルームサービス頼んだから、ゆっくり過ごしてから三峯神社に行こう!」
二葉はベッドを片手でポンポンと叩く。そのことに気付き、匠は二葉の隣に横になる。彼の差し出した腕に頭を乗せると、二葉は匠に抱きついた。
「……せっかくだから、もう少し余韻に浸らせて……」
匠の少し湿った体と、フローラルのボディソープの香りに包まれて、二葉は気持ち良さそうに目を閉じる。
「匠さん……六年前のこと、気付いてなかったとはいえごめんなさい……」
「いいんだ。ようやく記憶の上書きが出来たし、昨日は更に忘れられない夜になったしね。あんなに激しく愛し合ったこと、絶対に忘れない」
「本当にねぇ……観音院の階段を昇った後にあんな体力があったことに驚きだわ」
匠の手が二葉の髪を撫でる。
「六年前、もし俺が二葉を引き留めていたら、あの日の夜もこんなだったかな」
「さぁ……それはわからないな。でも過去は過去。今が幸せならそれでいいんじゃない?」
「……どうしよう……朝食の前に二葉が食べたくなってきた」
「あはは! でも空腹の私を食べても美味しくないと思うよ」
「それって食後ならいいってこと?」
まるで尻尾を振る子犬みたいな顔をしている。本当に可愛い人。