客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

匠の正体

　あれから慌てて食事を済ませ、二人は一度体を重ねてから、部屋を出た。

　匠がチェックアウトの手続きをする間、二葉はまたソファに座って待っていた。

　その時だった。窓の外を眺めていた二葉は、ガラスに映る人影を見て目を見開いた。徐々にこちらに近寄ってくる男性の姿が見える。それはチェックインの時に話しかけてきた人物だった。

　まさかと思いながらも、視線は外の景色に集中する。

　その男性は二葉の横で立ち止まる。二葉の心臓はびくりと跳ね上がる。

「おはようございます。この度は当ホテルのご利用、ありがとうございました。ご不便などありませんでしたでしょうか」

　前回会った時同様、ピシッとしたスーツに身を包み、朝から爽やかな笑顔を浮かべていた。

　二葉はどこか尻込みしながらも、精一杯の笑顔を貼り付ける。

「ありがとうございます。とても快適に過ごさせていただきました。是非また利用させていただきます」
「それは何よりです。それでお連れ様は……」
「今チェックアウトの手続きを……」

　二葉は言いかけて驚いた。匠が緊張感を持った面持ちで慌てて走ってきたのだ。