客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 匠は二葉とその男性の間に滑り込む。

「何か御用ですか?」

 緊張感のある匠の声を察知し、二葉はただならぬ気配を感じた。

「というか、何故あなたがここにいるんですか?」

 まるで知り合いのような話し方に違和感を覚える。

 男性はクスクスと笑うと、テーブルを挟んだ二葉の向かい側のソファに腰を下ろした。

「まぁ座れよ。少し話をしようじゃないか」
「どうせあの話だろ。わかってるよ」
「お前が立ったままだと、そちらのお嬢さんも困ると思うんだが」

 男性は二葉に笑いかけると、匠に座るよう促す。匠は深くため息をつくと、二葉の隣に座った。二葉の手を握りしめると、男性を睨みつける。

「二人は付き合ってるのかい?」

 返事に困り、二葉は匠を見上げる。

「そうだよ」
「ふーん……兄弟なのに、相変わらず俺とお前は好みのタイプが違うらしい。俺はどちらかといえば、ラウンジで揉めた女性の方が好みだからな」

 兄弟? まさか匠さんのお兄さん? しかも今、ラウンジの話をした。ということは先生のことも知っているということ?

 突然出された情報の多さに、二葉の頭はパンクしそうになる。

 だってこの男性……私の見立てではかなりの役職についていると思っていたのよ。だとしたら……。
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