客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「……なんか情報がありすぎて混乱してる」
二葉に顔を覗き込まれ、匠はハッとした。
「ご、ごめん。言うほどのことじゃないかなと思って……」
「まぁ結婚してる訳じゃないしね。言わないことがあるのも頷けるし。まさか匠さんがあの新急ホールディングスの社長の弟だなんて……ちょっとびっくりしたけど」
「……今父が会長で、兄が社長なんだ。別に嫌な訳じゃないんだけど、なんか敷かれたレールに反発したくなってさ。今の会社に就職したんだ」
「なるほど」
「でも二葉、思ったより驚いてないよね」
匠はに言われ、二葉は少し考えてから苦笑いをする。
「実はね、姉の旦那さんがブルーエングループの専務さんの秘書なんだ。だからかもしれない」
「えっ、それもすごいんだけど」
「まぁ私じゃないしね……四月からは転職?」
「約束だしね、仕方ない」
寂しそうに笑う匠の顔をじっとみつめ、二葉は問いかける。
「私と同じ職場だからっていうのは?」
「……最初は同じ職場なんてやりにくいかなぁって思ってたんだ。でもいつも一緒にいられるし、資料室でこっそりイチャイチャするのも悪くないし……」
匠は二葉の髪に触れてから、人差し指で撫でるように二葉の頬に触れる。
「だって……イギリスから帰って、そろそろ引き継ぎも考えないとって思っていたら、職場に二葉がいるじゃないか。そしたら二葉のそばにいたいって思うのは普通だろ?」
「……私がいなかったらもう辞めてた?」
「うん、そうだね」
「そっか……」
「お陰で楽しいオフィスライフを過ごさせてもらってる」
匠は二葉に軽くキスをしたと思うと、ニヤッと笑う。
「まぁ、あと数ヶ月だけど、悔いの残らないようにイチャイチャしよう」
明るい話題なのに、少し切ない気持ちになる。匠さんがいなくなると考えるだけで寂しい。