客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「さっ、ちょっと邪魔が入っちゃったけど、三峯神社に向かおうか」
匠に手を引かれて立ち上がる。そこで二葉は先程の譲の言葉を思い出す。
「お兄さん、さっき私のこと『例の』って言ってたよね。私のこと知ってるの?」
「あぁ……うん、ここのホテルってうちの経営なんだ。だから俺が六年前に女の子を連れ込んだって家族みんなに筒抜けで、しかもフラれたって言ったら笑いもの」
「だとしても、相手が私だなんてわからなくない?」
すると匠は気まずそうに顔を背ける。
「……実は六年前、一応と思って宿泊カードに二葉の名前を書いたんだよね……で、苗字がわからないから、あの……副島二葉って……」
その響きに、想像以上の照れと戸惑いと喜びを感じる。
「そ、それはバレるね……」
恥ずかしくて両手で顔を覆った二葉の耳元で、匠が小さく囁いた。
「いずれそうなってくれたら嬉しいけど」
なんだかプロポーズみたい……私だっていつかなれたらって思ってる。