客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
真梨子は二人の様子を見ながらクスクス笑う。
「なんだか不思議ね。まるで生徒同士のカップルを見ているような気分になるわ。そういえば、あなた高校はどこなの?」
「私ですか? 海鵬です。こう見えて陸上部だったんですよ。しつこい元カレを何度も振り切りましたから」
それを聞いた真梨子と匠が笑い出す。
「副島くん、本当に面白い子を見つけたわね」
匠は愛おしそうに二葉を見つめ、髪を撫でていく。すると彼女は照れたように頬を染めた。
「本当。俺にはもったいないくらいの子です」
「はいはい、ご馳走様。仲が良くて何よりね」
その時だった。バーの入口に目をやった真梨子の表情が突如として険しくなり、青ざめていく。
「真梨子」
彼女を呼ぶ声がし、匠と二葉は声のした方に顔を向ける。そこには三十代半ばくらい、短めの黒髪に眼鏡をかけたスーツ姿の男性が、怪訝そうな顔で真梨子を見つめ、立っていた。