客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

「家に帰ったら、君がいないから心配してたんだ」

 徐々に近付いてくる男性から、真梨子は目を逸らす。

「あぁ、ごめんなさい。連絡し忘れたみたい」
「君のことだからきっとこの店じゃないかと思って見にきたら、案の定だったね」
「今友達と飲んでるところだから、先に帰っててくれる?」

 男性の想像していた返答と違っていたのか、真梨子の言葉を聞いて眉をひそめる。

「……友達? そんな若い子が?」
「私の教え子の恋人なの。最近仲良くなったのよ」

 男性がそばに寄ろうとするのを、手を出して真梨子は牽制する。

 会話の内容から、彼が真梨子の夫であることが予測出来る。しかし彼女のよそよそしい態度が、男性を苛立たせているように見えた。
< 165 / 192 >

この作品をシェア

pagetop