客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二人の言い争う言葉に耳を傾けていると、真梨子が店を飛び出そうと走り出した。その瞬間に二葉が晃の腕を掴み引き止める。

 晃の視線が二葉に向いた瞬間、匠は兄が真梨子を連れて店の外に向かう姿を目にして驚いた。

 社長自ら出てきて対処するような大事(おおごと)じゃないはずだ。なんで兄貴が……?

 その時、匠の脳裏にあの日のあの言葉が思い出される。

『俺はどちらかといえば、ラウンジで揉めた女性の方が好みだからな』

 まさかあの言葉って本気だったわけじゃないよな……。

 親に勧められて結婚した若い奥さんと、たった三ヶ月で離婚したのが半年前。独身だし、ないわけじゃないのか?

 それに先生はご主人と上手くいっていないとはいえ、まだ既婚者だぞ。やっぱりそれは駄目だろう。
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