客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「……たぶんあなたが理解しようとしない部分の真梨子さんを、私は知ってます。だって真梨子さんが打ち明けてくれたから……」
「何を言ってるんだ、いい加減に離してくれ」
「離しません。真梨子さんは今あなたの元から離れた。なら行かせることは出来ない」
二葉は怒りと共に、掴む手の力も強くなる。
「真梨子さんは周りの友達にあなたの文句を言われても、庇い続けたそうです。あなたを愛していたからそばにいて、あなたと仲良くしたいからあなたの意見を受け入れた。じゃああなたは真梨子さんのために何をしましたか? 子どもが欲しいと願う真梨子さんの気持ちを、あなたはどう受け止めたんですか? 一緒に悩みましたか? 彼女の気持ちに寄り添いましたか?」
「それは……」
晃は目が泳ぎ、言葉に詰まる。
「でも子どもがいたら今のように仕事や、こうして夜に飲みに行ったり、好きな買い物だって出来なくなる。今の二人の穏やかな生活が……」
「それは真梨子さんが望んだものですか?」
「えっ……」
「真梨子さんが仕事を続けたいと言ったんですか? 飲みに行きたいと言いましたか? 欲しいものがたくさんあると言いましたか? 好きなことをして穏やかに生活したいのはあなたの希望でしょ? それこそあなたの意見を押し付けてる証拠だわ」
二葉は悔しくて唇を噛み締める。どうしてこんな自分勝手な男に、真梨子さんの人生を握られなきゃいけないんだろう。