客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

「先生はすごく面倒見が良くて、厳しいけど信頼出来て……。いつも笑顔で、生徒に愛情を持って接してくれる良い先生でした」
「君は……生徒だったのか?」

 匠は頷く。

「お子さんがいたら、たくさん愛情を注いで、一緒に楽しんだり悲しんだりしてくれるお母さんになるんじゃないかな……」

 不思議だな。こんな風に先生の話をする日が来るなんて。それもこれも、真っ直ぐに誰かのことを考えられる一生懸命な二葉に感化されてるからだろうな。

 本当に二葉ってすごい。俺にこんな想いを抱かせて、行動にまで移させるんだから。でも二葉の尻になら敷かれていたいとさえ思える。

 二葉は匠の手を握ると、晃の前に立つ。

「真梨子さんの話をちゃんと聞いてください。そして真梨子さんの気持ちを受け止めてあげてください……。お願いします」

 晃は二人の方を見ようとはせず、よろよろと起き上がると、店の入口へと歩き出す。そしてそのまま店を後にした。
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