客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
ようやく緊張が解け始めた匠の手から、二葉はそっと花束を受け取る。大きな蓮の花を見て頬が緩む。
「……蓮の花、すごく嬉しいの。私と匠さんの始まりの花だもん」
「蓮の花って、泥水の中から華麗な大輪の花を咲かせる様子から、『苦難を乗り越えた先に幸せがある』っていう人生の例えがあるんだって。まるで俺たちみたいじゃない? 出会った時は二人とも辛い境遇だった。それから別れも経験して今がある」
「うん……そうだね……」
二人が抱き合うと、木之下が咳払いをする。
「じゃあここからは二人の時間ということで、協力してくれた二人に我々からプレゼントがあります! はい、和田!」
木之下に呼ばれて飛び出してきたのは、匠のパートナーである和田だった。和田は顔を真っ赤にして、興奮した様子で二人に一通の封筒を差し出した。
「お二人とも、おめでとうございます! いや、まさかお二人がそんな関係だったとは知らず……」
「和田!」
「あぁ! はいっ、すみません! これは企画部から、当ホテルの本日一泊分のプレゼントになります!」
思いがけないプレゼントに、匠と二葉は驚いたように目を見開く。
「今日は二人とも早退でいいって部長からお達しが来てるぞ。その代わり、アンケートの協力と、雲井さんに《《例の件》》を打診するのを忘れないでくれよ」
「……わかってるよ」
そう言い残すと、企画部の面々は二人にお祝いの言葉を投げかけながら帰っていき、あっという間に二人だけになってしまった。