客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「イギリスから帰ってすぐ、部長には引き継ぎをしたら退職するって伝えてたんだ。でも二葉と再会して、退職を年度末に延ばしてもらった。そのことは木之下も知ってたし、だから俺にとってこの企画が最後の仕事になるはずだった」
「……それで?」
「そうしたら木之下がさ、プロポーズの実例があったら想像しやすいんじゃないかって部長に打診してさ、その人材が俺たちって知ったら部長もノリノリ。だから二葉にバレないように気をつけながら、いろいろ打ち合わせとかしてたんだ」
「……全然知らなかった……」
その言葉を聞いて、匠は満足したように笑う。
「大迫さんからも、『二葉は日常の中で、サプライズプロポーズに憧れてるらしい』って情報をくれて、じゃあ仕事中ならサプライズになるかなって思ってさ」
「確かに……仕事中にプロポーズなんて思わなかったから、本当にびっくりしたよ」
その時、ふと帰りがけに言われた木之下の言葉を思い出した。
「そういえば、木之下さんが私に何か聞いてって言ってなかった?」
「あぁ……うん……あの、今日の俺たちのプロポーズを実例として広告の中で紹介していいかって……ほら、個人情報だし」
困ったように話す匠を、二葉はキョトンと見つめる。
「えっ、そんなこと?」
「そんなことって……顔は出ないけど、チャペルの写真とか、今日の内容とか……」
「私は別にいいよ。みんなに手伝ってもらっての今日でしょ? 何より誰かのプロポーズの背中を押せるなら素敵じゃない?」
匠は二葉の顔を引き寄せると、唇を重ねた。
「やっぱり二葉には敵わないや。そんな二葉が好きだよ」