客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
もう一度キスをしようとした時、突然二葉のスマホの着信音が響き渡る。
二葉は慌ててテーブルに置いた鞄の中からスマホを取り出す。画面を見た途端、匠の元に走った。
「匠さん! 真梨子さんから!」
それを聞いて匠はパッと起き上がる。二葉はベッドに腰掛けると、すぐに電話に出た。
「もしもし」
『あぁ、私よ。わかるわよね?』
「もちろんです。あれからどうされてたか心配してました……とりあえず生きていてくださって安心しました」
『何、その不吉な言い回し』
「あぁっ⁈ いえ! そうではなくて、事件に巻き込まれたりしてなくて良かったといいますか……」
『……心配してくれたわけね? それはありがとう。でもピンピンしてるわ』
向こう側から聞こえる笑い声に、二葉はどこかホッとした。
『夫にいろいろ言ってくれたみたいね。巻き込んでしまったのに、あなたには本当に感謝しかないわ』
「そんな……また暴走して、言いたいことを思うがままに口にしてしまいました……」
『まぁ想像出来るわ。あの人、相当ショックだったみたい。私としてはあなたが代弁してくれたからスッキリしたけどね』
「いえ……」
『……私の味方になってくれてありがとう』
私がしたことは、ただ思ったことを口にしただけ。それでももし真梨子さんの力になれたのなら、それより嬉しいことはない。
「あの……あれからどうされていたんですか?」
『……あの日からしばらく家には帰らなかったんだけど、今日ようやく夫と話し合いの場を設けたの』
「それって……」
『ええ、離婚することにした。前向きな別れね。お互いの幸せのために、別々の道を行こうって決めたの。なんだかスッキリしたわ! あなたに会わなかったら、きっと今もグチグチと悩んでいたと思うのよ。だからありがとう。あなたも副島くんと話し合ってから結婚しなさいね! これは経験者からの忠告よ』
そして電話は一方的に切られてしまった。何も言えなかったけど、真梨子さんなりに、私に報告をしようとしてくれたのかな……そう思うと胸が温かくなるようだった。