客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
* * * *

 朝食を済ませ、荷物をまとめている時だった。

「二葉、ちょっとこっちに来て」

 窓辺に立つ匠に手招きをされたため、二葉は彼のそばに駆け寄る。太陽が昇り、朝陽が眩しいくらいだった。

 匠の前に立つと、彼は二葉の手を両手で握る。

「昨日、本当はもっといろいろ言いたいことがあったんだ。でも見られてると思うとなんか照れ臭くなっちゃってさ……」
「ううん、すごく嬉しかったよ……」

 そして二葉の手にそっと口づける。

「二葉に出会えて良かった。あの時声をかけてくれてありがとう」
「そ、そんなこと言ったら……あの時私のことを突き放さないでくれたでしょ? 急に声をかけて来た知らない人間と一緒に巡ってくれたことに感謝してるの」

 普通なら不信感を抱くような場面なのに、あなたは受け入れてくれた。

「俺の問題に一緒に向き合ってくれてありがとう。二葉がいてくれたから、俺も先生も前を向けた」
「それは……私はただ言いたい放題なだけだし……」

 匠はクスクス笑う。

「それに頑固だし、猪突猛進だし」
「うっ……その通りだから否定出来ない」
「そんな二葉だからいいんだよ。間違っていることを正してくれるし、わからないことを教えてくれる。二葉といると新しい発見でいっぱいなんだ」
「私からすれば、匠さんも同じ。ちゃんと匠さんの考えを伝えてくれるし、一緒にいると新しい発見をするし、自分が成長出来るような気がするの」

 匠さんといると、同じ方向を向いてるって実感する。それはまるで味方がいるような感覚で、すごく安心出来るの。
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