客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
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二葉は慎吾の部屋が見える公園のベンチに座って、なんの変化もない扉をじっと見つめていた。
よくある白い二階建てのアパート。最近は部屋に行くこともなくなっていた。
本当ならば今日はデートの約束をしていたが、慎吾から行けないと断られたのだ。
朝からここに座って早三時間。
私ってば一体何をしているんだろ……これじゃあただのストーカーじゃない。彼を見張ってどうするつもり? 現場を押さえて怒るの? それとも納得して別れる?
その時彼の部屋のドアが開き、中から慎吾が出てくる。別にいつもと変わらない。
歩いて駅に向かう慎吾の後ろから、二葉は十分な距離をとりながらついていく。
何事もないように……そう思っていたが、駅前で彼が誰かに手を振るのを見て愕然とした。
慎吾の視線の先にいたのは、スラリとした体型のキレイな女性だった。まさに慎吾の好みのタイプ……作り物の私とは違って、自然な身のこなし。二葉は肩を落とす。
二人は楽しそうに腕を組むと、そのまま繁華街へ向かう。この先はホテル街になる。やっぱりそうなの?
二葉はカバンからスマホを取り出すと、カメラを起動する。
心拍数が上がり、冷や汗が止まらない。そして二葉は息が出来なくなった。
案の定二人はホテル街に入って行く。そしてリゾート風のホテルの前で何やら話し込むと、中へ消えていった。
二葉は震える手の中で、写真を確認する。しっかり撮れていた。
二葉は大きく深呼吸をすると、カバンの中にスマホをしまって走り出した。
もう終わり。でもやっぱり悲しくて仕方がない。