客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二葉も外すと匠に渡した。こんなことをしたら、もっと名残惜しくなるかな……。

「なんかさ、俺たちの出会いって、あの映画に似てるんだよね……題名忘れちゃったんだけど」
「あっ、私も思ったの! 電車で出会った二人が、一日一緒に過ごすやつじゃない?」
「それそれ。なんか似てるなって思ったんだ。まぁ日数も違うし、映画の二人はプラトニックな関係で終わったし」

 映画の二人は、その後に再会の約束をして別れる。私たちは?

「もし……もしだよ。この先偶然再会したりしたら……」

 二葉は緊張した。彼は何と言うつもりだろう。私は何て答えたらいいのだろう?

「もしその時、お互いパートナーがいなかったら……」
「……いなかったら?」
「……坂東三十三観音を回らない? もちろん車は出すし」

 変に緊張してしまった自分が恥ずかしかった。勘ぐり過ぎた自分がおかしくて、笑いが止まらなくなる。

「いいですね! じゃあそれまでこの輪袈裟は大事にしまっておかないと」

 車がロータリーに止まると、二人は黙り込む。匠の手が二葉の頬に触れると、そのまま引き寄せられ唇が重なる。

 絡み合う舌が、この三日間の熱を思い出させた。

 唇が離れると、二葉は別れ難くてもう一度キスをした。

「これ以上しちゃうとダメ……帰りたくなくなっちゃう……」
「……俺も帰したくない……」
「……じゃああと十秒だけ……」

 味わうように、深く繰り返されるキス……きっと忘れない。

 十秒経つと、二人は抱き合う。

「またどこかで会えたら良いな……」
「そうだね……」

 二葉は車から降りると、一度だけ匠に手を振り、改札口へと走り出した。

 

 
 
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