客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
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二葉が出勤すると、オフィスがざわついている。自分の席に着くが、いつも隣にいるはずの先輩の姿もない。
そこへ二葉と同じフロアで働く友人の美玲が近付いてくる。肩より少し長めの髪を一つにまとめ、バーガンディの縁の眼鏡をかけていた。
「おはよう。何かあったの?」
「おはよ。それがさ、イギリスでの企画に携わっていた人が来週帰国することになってたのは知ってるでしょ?」
「うん、木之下さんの同期で、最大のライバルなんでしょ? 『帰ってくるなー!』って頭抱えてたよ」
「あはは、ウケるんだけど。その人が何の手違いか、今日から出社することになったらしくて、まだ準備とか補佐の担当とか決めてなかったから、てんやわんやみたい」
「ふーん……。そんなにすごい人なの?」
「そうだね、若いのにかなりのやり手。誰が補佐に付くのかなぁ。まぁ私たちには関係ないけど」
「だね」
二葉が様々な形態のホテルを展開するこの会社に転職し、企画部に配属された。同じ年齢ということもあり、いろいろ教えてくれたのが美玲だった。
二葉と美玲はそれぞれ先輩の補佐として働いていた。雑務が多いが、それでも忙しい毎日の方が充実している。